「どうしたの?お願いしたいことって…」

「なんで昨日、悠陽くんと帰ってたの?」

「え?」



校舎裏に連れてくるなり、ボブの子が私の肩を力強く押した。

よろめいて驚く私に、ボブの子は続ける。



「私見たんだから。悠陽くんと一緒に駅に向かってたとこ」

「いや、あれは…」

「悠陽くんと付き合ってんの?」

「それは違うよ」

「じゃあ何?」

「ただの友達。」



続けざまに来る質問に、一つ一つ丁寧に答えたつもりだった。

なのになぜか彼女のかんに触ったらしく、



「ただの友達?ふざけんな!あんたみたいな陰キャが、容易く悠陽くんに近付いてんじゃねーよ」



と、彼女の脚が私のお腹に直撃し、私は声にならない声を上げてその場にうずくまった。

痛い。怖い。痛い。これまでに感じたことの無い痛みと怖さが、同時に私を襲ってくる。



「ミキ、そろそろ戻ろーよ」

「いい?これ以上悠陽くんに近付いたら絶対許さないから。」



ボブの子─ミキちゃんはそう吐き捨てると、舌打ちして戻っていった。


それから当分、私は腰を抜かしたように動けなかった。