「ハルは何出んの?球技大会!」


柘植くんが、昼休みになると同時にハルくんに突撃する。
日奈も興味津々で身を乗り出した。

…私も、少し気になる。



「俺?バスケとサッカーで迷ってる」

「俺バスケ出んぞ!」

「まじ?じゃあ俺もバスケ〜」

「流星ど下手だからサポートしてやって」

「あ?!テメー俺は県大会で個人プレー賞取ってんだぞ!!」

「まじかよ、流すっげー!」



ハルくんが柘植くんに向かってわざとらしく拍手すると、褒められ慣れていない柘植くんはどう反応していいのかと焦る。

その光景を見て、日奈とハルくんはお腹を抱えて大爆笑した。



(今日も平和だなあ…)

「桧山さん、ちょっといい?」

「え?」



ふと頭上から降ってきた声に顔を上げると、
何とそれはさっき見た黒髪ボブの女の子のグループだった。



「わた…し?」

「そう。桧山さん。お願いしたいことあるんだ」

「いま…?」

「できるだけ早い方がいいんだけど、だめ?学級委員さん」




なんとなく、妙な胸騒ぎがした。

私を見るその人たちの目が、鋭く、冷たいような気がして怖かった。


逆らっちゃいけないと、本能が司令を出してくる。



「ごめん、みんな先食べてて。」

「え、ちょ、美桜、」



困惑する日奈や柘植くん、そしてハルくんをその場に残して、私は席を立ちそのグループに囲まれて教室を出た。