フワリ、と目の前を何かがよぎった。
青白い光に照らされた白い半透明の何か。
目に涙の膜が張っていて何かすぐには分からなかった。
ただ、『自由だ』そう思った。

頬を涙が伝った時、何かの正体がわかった。
クラゲだ。
綺麗な水の中をただフワフワと流されるままに、時には自分の意思で。


「クラゲってさ、不思議だよね。見てて飽きないっていうかさ。」


急に上から聞こえた声にビクリとする。
涙を拭うことも忘れて見上げればよく知った顔が立っていた。
どうして、という言葉が音にはならず抜けていく。
小学校からの幼馴染が切ない顔をしていたからだ。

俺ここでバイトしてんだ、って乾いた笑いを見せながら隣にしゃがむ。
知らなかった。

頭に乗せられた懐かしい手に心が緩んで嗚咽が漏れる。
そのままその手に促されるままに声をあげて泣いた。
胸が締め付けられて苦しくて、それをずっと一定のリズムで宥めながら彼は顔が見えないように水槽を見ていてくれた。