ある女の子が居た。
ただ普通の女の子だった。

なんて事のない日常の一日に起きた非日常。


それは突然目の前に現れた。

鋭くささるような視線に真っ赤な目、黒くて長いとても綺麗な髪、そして何よりも彼には刃物のように鋭利な尻尾の様なものが生えていた。
彼は化け物と呼ぶに相応しい見た目をしていた。


そして、彼は言った。
「今から君を殺す。」
不思議と怖くはなかった。
目の前に非現実的な存在が居たからか、それとも彼の美しい見た目に心も奪われてしまっていたからか。

更に彼はこう言ったんだ。
「君の最期の一言を聞き届けよう。」と何も写してないような瞳で。


そこで彼女は泣き出してしまったんだ。
きっと彼は怖がってるだけだと思って何も言わずに彼女の言葉を待っていた。
けれど彼女の一言は彼の心を酷く締め付けるものだった。

彼女はただ静かに泣きながら彼に近づいて
こう言った。
「今すぐにでも殺してください。こんな世界で生きていたくなんかない。」とまるで懇願するかのように。


彼は不思議でしかなかった。
怖がられるのには慣れていた。
命乞いをされる事も少なくはなかった。
それが当たり前だったからか、自分が今何を言われてるのか分からなかった。

彼は彼女を左手で抱きかかえて、
右手を首にかけた。
けれど彼には彼女を殺せなかった。
世界に絶望した彼女の気持ちは理解出来なかったけれど、それがとても脆く美しい物に見えてしまったから。




これはそんな非日常から始まるお話。