私はメイクルームに戻って、次にメイクする俳優さんを待った。

今、すごく人気のある新人俳優さん。

今日はクイズ番組に呼ばれてる。

番宣かな。

松山悠介(まつやまゆうすけ)君。

まだ19歳。

有名進学校を卒業して、でも、大学には進まずに、俳優さんとして頑張ってる。

頭が良くて、話も上手、もちろんお芝居もキチンとこなす、私より年下なのに、すごいなって思う。

だけど…

ちょっと…

私にだけかな、敬語が使えないみたい。

『綾音、お疲れ』

なんでタメ口?

一応、5歳年上なんですけど。

『あ、お疲れ様です、よろしくお願いします』

『今日、撮影長引くかも知れないね』

『そうですね…』

愛想笑いをする私。

早速、ヘアメイクの準備に取りかかった。

『松山さん、今日はどんな感じでいきますか?』

『ねえ、綾音。松山さんってやめてくれる?悠介でいいから』