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俺に抱きしめられたまま、泣きじゃくってた比奈子は、ようやく嗚咽が止まると、恥ずかしそうに顔を上げた。
「……あの…ありがとう」
なにその上目遣い、可愛すぎるんだけど。
比奈子って天使?天使なの?
「どういたしまして」
俺がニッコリ笑ったら、比奈子も遠慮がちにだけど笑ってくれた。
比奈子が俺に笑いかけてくれるなんて、激レア。
だいたいいつも、怒ってるからね。
昔は泣き虫だった比奈子が、こんなに気が強くなるとは思わなかったけど。
まあ、俺が苛めて泣かせまくった反動かもしんないけど。
そんなことより、俺がなんで、ここにいるのかって?
そりゃあ、後ろからついてったからに決まってるでしょ。
伊達にストーカーって言われてる訳じゃない。
まあ、それよりアイツ?
同僚だかなんだか知らないけど、いかにもチャラそうで女好きそうで、ちょっと心配になったからなんだよね。
案の定ってか、予想の斜め上を行ってたけど。
ほんと、助けられてよかった。
「つーか比奈子、もっと男に危機感持てよ。あんなチャラそうなのと、2人っきりになるとか」
「……うん、ごめん。気をつけるね」
比奈子は珍しく、俺の言葉にしおらしく頷いた。
よっぽど怖かったんだろうな。
ずっと俺に抱っこされたままでいるし。
俺の上着をぎゅって掴んでるのとか、まじ可愛い。



