あまり目も合わせてもらえていないし、掴みどころがあるようで無いような気もします。さり気なく誤魔化されて、本当の彼に近付けさせてはくれないような。それでいて。

決して、濁ったり澱んだ感じもしない。
善い人かは別だとしても、信用できる人だって思えます。だから。
視線だけでそっと、佐瀬さんを窺った。




カーナビに案内させた訳でもないのに、迷わず家の前で降ろしてくれた彼に感心しつつ、開け放った助手席側の窓から覗きこんで丁寧にお礼を言う。

「送っていただいて、本当にありがとうございました」

「給料の内だ。気にすンな」

肩の荷をやっと下ろせたとでも言いたげなうんざり感を漂わせながら、コンソールトレーに手を伸ばして煙草のボックスを手に取る仕草。
シガーライターで火を点けた一本を口に咥えて、佐瀬さんは疲れたように白い息を長く逃した。

「・・・悪いな、お嬢ちゃん。オレは禁煙したことも、する気もないんでねぇ。
乗ってるあいだは我慢するが、次は鼻栓でも用意しとく。それでカンベンしてくれ」


私達にとって栄えある第一関門は。目下のところ、愛煙と嫌煙問題のようです・・・・・・。