「可愛い美玲にそんな風に思ってもらえるのは、とても嬉しいよ」

淡い笑みを乗せた兄さまは、ウィンカー点滅させて交差点をゆっくりと左に折れる。道沿いの景色は次第に、コンビニや飲食店が連なって賑やかに。

「でも、・・・そうだね。順番をつけたり、方法を探してるあいだは本物とは言えないかも知れない」

デジャヴュ。一実ちゃんにも言われました。頭であれこれ考えてる時点で恋じゃない、って。

「・・・探さなくても、ひとりでに答えは出てきますか?」

「本物に生まれ変わったら、その時は何も考えなくても欲しくなるし、それしか目に入らなくなるものだよ」

ふわりと薫るような微笑みが、信号待ちで私を囚えます。

「自分を持て余すくらい欲張りになって、美玲もきっとすぐに分かるから」

理性じゃなく衝動で。心が動く、動かされる。
きっとその瞬間は、何がきっかけかさえ。

思い通りになるものじゃない。・・・そういうことでしょうか。
何となく、モヤっとしていたものも晴れた気がして。

「成るように成るってことですね」

息を吐くように力を抜いて。そっと笑顔をほころばせたのでした。