「次はレイちゃんの得意なもの、ご馳走してくれる?」

食後の洗い物を申し出て、終わりにシンク周りを綺麗に拭いていたら、食器を仕舞っていた彼からリクエストをされた。

確かに中等部の頃から、立派な花嫁になる為だとママからお料理や掃除洗濯をひととおり仕込まれました。が。レベルは至って普通です。中の中です。

「・・・・・・カレーとか肉じゃが。・・・で、いいんでしょうか」

恐る恐る。

「ん。そういうのがいい」

エプロン買わなきゃな、と屈託ない笑顔が返る。

「レイちゃん用のマグカップとか、今度一緒に買いに行こうか」



この部屋に、私の居場所を作ることを当たり前みたいに喜ぶ征士君。
不思議な気はしたけれど、嫌だとも思わなかった。

でも。

この気持ちが恋なのかって訊かれたら。答えにはまだ辿り着いていない。
一実ちゃんが言っていたのが『本物の恋』なら。

・・・違う気もするんです。