部屋の外で帰りを見送る時には、温かく祝ってもらえた感謝と名残惜しさでいっぱいでした。

係の人に片付けてもらったダイニングテーブルの上は、テーブルフラワーの周りをプレゼントの包みが囲んでいて。
始まりじゃなく帰り際に、それも手渡しじゃないのが決まりごと。誰からなのかを想像しながらくすぐったくリボンを解くのも、毎年の楽しみの一つだったりするのです。


「すっごく楽しかった! また来年も()んでねーっ」

ご機嫌な一実ちゃんと笑顔でハグ。

「おにいちゃんも、いるぞぉ・・・」

「あとで、おしおきだからねぇ、ミレイ~」

呂律は怪しいのに、支離滅裂でもない二人。

「・・・なにかあったらいつでも言えよ」

「多数決が欲しいときは、じーさまよりレイの味方だからさ!」

何も訊かずにただ、私の『結婚相手』として佐瀬さんを受け容れてくれたヒサ君とヨウ君。
私を抱き寄せ、優しい「おやすみ」のキスと微笑みを残した愁兄さま。


みんながエレベーターに乗り込むまで見届け、二人きりになると。こんなにも広いお部屋だったのかと妙に寂しく感じてしまう。

ソファにどっかりと座り、気怠そうにネクタイの結び目に指をかけて首元を緩めた佐瀬さんに。

「疲れましたか・・・?」

「あー・・・、まあねぇ」

隣りにちょこんと腰掛けたものの、いつもの部屋だったら別に緊張したりもしないのに。場所が違うせいかどことなく気持ちが落ち着かなくて。
目が合ったのを咄嗟に泳がせてしまい、どちらかと言えば。・・・恥ずかしくてここから逃げ出したくなるような。