その夜は。食事をすることさえ惜しむように、あっという間にベッドに沈められた。

ふーちゃんが残業で遅くなると分かっている日は、短い時間でも佐瀬さんは我慢したりしなかったけれど。それでも最初から一気に欲情を押し上げて。まるで容赦がなかった。

息も絶え絶えに幾度となく狩られ、貪られ。骨も残らず食べ尽くされるんじゃないかと思うほど。

言葉よりも強烈に刻まれる。

答えの代わりに何もかもを開いて、差し出す。



熱を放ち、私に体ごと預ける貴方の重みを受け止める。
汗だくになって荒く呼吸を乱す生々しさに、実感する。

もう恋とは呼ばない。
だってこれは。お互いの(すべて)を懸ける、契り。









見た目よりがっしりした腕に、寝相よく抱え込まれてぼんやり醒めた、明け方。
少しだけ口が半開きになって寝息を立てる、佐瀬さんの横顔を薄目でそっと見つめた。

貴方とは違う水に棲む魚だった。と。・・・思っていました。
けれどもしかしたら。境界線に近い、雑ざり合った同じ(セカイ)の端と端にいたのかもしれません。

本当は。極道(あちら)の水に還りたいと思っていましたか。
愁兄さまと、お祖父さまの手伝いを承諾したのは私のためだけでしたか・・・?


漠然とそんな思いが過ぎったのを頭から振り払うと、佐瀬さんに縋るように躰を寄せる。

「・・・・・・行かないで・・・」


小さく呟いて。私はまた、目を閉じた・・・・・・。