「・・・・・・口だけじゃ足りねぇな」

「ああ、そうだねぇ。ちゃんと誠意は見せなくちゃ佐瀬君にも失礼だなぁ」

うんうんと、頷いてみせるお祖父さま。

「お詫びというより私の気持ちとして、可愛い孫娘の望みを叶えてあげるのはどうだろうかな? レイちゃんからキミを引き離すのは、やっぱりしのびないからねぇ。婚約の件は私からあちらに断っておくよ。征士君には申し訳ない結果になってしまっても、人の心は思い通りにはならないものだからねぇ」

・・・・・・え?

たぶん。すぐには飲み込めていませんでした。
望みを、・・・って。
佐瀬さんとのことを?
認めてくれる・・・?

「よかったね・・・美玲。おじい様が許してくれたから、これからは堂々と佐瀬といられるよ」

「愁、兄さま・・・」

私には佐瀬さんの腕に囲われたまま、まだ呆然と。信じられなくて。

「ったくさ。ホントはこうなるように、愁兄がシナリオ書いたんじゃないの?」

ゆるゆると視線を動かせば。
憮然としたふーちゃんに、兄さまがふわりと微笑み返しています。

「そんなに思い通りになるものじゃないって、おじい様も言ってなかったかな」

「ぼくはするよ? じーサマが言うこと聞かなかったら、グループシステムに丸ごとウィルス感染させるつもりだったからね! いつでも本気だって忘れないでよ」  

「おやおや双葉は相変わらずだねぇ。肝に銘じておくから、ほどほどにしておきなさいよ」

ニコニコと窘めるお祖父さまと、『は?!』みたいな顔で睨めつけたふーちゃんを交互に。



夢を見ているのかと思いました。
こうなって欲しいって自分の願望が見せた夢。

目を瞑って開いたら。跡形もなく消えてしまいはしないかと。怖くて。泣きそうに。
佐瀬さんの温もりにすがりついて、小さく躰を震わせていました・・・・・・。