まるで世間話をするかのような。
重くも軽くもなかった、お祖父さまの声音。
普段と変わらない温厚さで。

けれど。
あまりの衝撃で。
自分の頭が壊れたんじゃないかと思えた。

あるはずもないと。
微塵もその可能性を考えたことはなかった。



お祖父さまが、ずっと前から佐瀬さんを知っていた・・・・・・?

兄さまも佐瀬さんも知っていて私に言わなかった・・・?

それはどういう・・・?

どうして?

どう。



蝋で固まった人形のように。
わたしは。ただ。佐瀬さんを見ていた。

硬い皮膚の下で、血液と思考回路を懸命に押し出し続ける。
止まらないで。
動いて。
オネガイ。


愁兄さまが、ふーちゃんが、お祖父さまが。どんな表情をしているかなんて頭になかった。
佐瀬さんの口から紡がれる言葉しか意味がなかった。


私が間違えちゃいけないことは。なに?


心の中で何かを振り抜いて。



片手はスラックスのポケットに収まったまま。どこか不敵な佇まいでおもむろに振り返った佐瀬さんの。眇めたような眼差しには、揺らぎもなにもありませんでした。

鈍色の銃口を私の心臓に突きつけ。
オレに預けろ、と。

見えない声を聴く。




「・・・・・・憶えちゃいねぇな」

薄く口角を上げお祖父さまを捉えた彼の目は。人間味の消えた、非情な光を宿していました。