私は。ただ愕然として。・・・呆然として。もたれかかったままの、ふーちゃんの頭の後ろを穴があくほど見つめていました。

秋津組という、ニュースでも耳にしたことがある大きな暴力団組織の名前より。

佐瀬さんが、若頭という立場だった事実より。

ふーちゃんが私と佐瀬さんの関係を知っていたことに。

有り得ない衝撃を受けて、頭の中が真っ白になっていました。





私に秘密にしておくように言った愁兄さまが、ふーちゃんに教えるはずがありません。たぁ君だって知らなかった・・・!

それならどうして、ふーちゃんが・・・?
躰からゆっくりと血の気が引いていく。

もし。ふーちゃんが『許さない』と言ったら。
私を諦めさせるためならきっと手段を選ばない。
家に来るのも、本当はパパとママにそれを話すため・・・?

ぐにゃり。・・・と、心臓がひしゃげるみたいな音を立てた。
眸が大きく歪んで。
全身が強ばる。

口から手を外し、体勢を戻して顔だけこっちを向いたふーちゃんが、感情の消えた眼差しだけで私を竦ませた。

「なに怯えてんの。ぼくに隠しごとなんかできるって思ってた? ・・・どんだけ馬鹿なの、ミレイ?」