11時には迎えの車に乗り込み、途中、大型スーパーに寄ってもらって、ランチ用に一食分のサラダやカットフルーツ、ベーカリーショップでは香ばしい香りに誘われて、好みのパンをいくつか。

本当は、簡単なお料理でよければ何か作ってあげたいんですけど、自炊を一切しない彼の部屋には栓抜きとペティナイフくらいしかなく。ほぼ99%外食の佐瀬さんに、調理器具や調味料を揃えてほしいなんてとても言えません。
せめてそれならと最近は、お寿司やテイクアウトの主食の他に、普段は摂れてなさそうな野菜や果物を買うようにして、もとい、買ってもらっています。




他に人けのない幽寂としたビルの、二人でも広すぎる部屋で。
並んでソファに座り、テレビを観ながら世代の違いを不思議がったり。
野菜を勧める私に少し煩そうに、それでも取り分けた分はきちんと平らげてくれたり。
口の端に付いたサンドウィッチのマヨネーズを、佐瀬さんが指で拭ってくれたり。
珈琲だけは、必ず佐瀬さんが淹れてくれたり。

特別じゃない、ありふれた普通。
こんな日々が続いていつか。家族が増えたら、きっと。参ったって顔をしながら子供をあやす佐瀬さんが思い浮かんで。
未来を描けることがすごく幸せで。
愛おしくてしかたがありませんでした。



「・・・なンだ、オネダリか?」

佐瀬さんの体に縋るようにきゅっと抱き付くと、伸びてきた手が私の顎の下を捕まえて顔が寄せられる。

遊ばれているみたいなキスが次第に深くなって、そのままソファに押し倒された。
膝丈のフレアスカートから腿が露わになり、カットソーがたくし上げられて、あっという間にあちこちに指が忍び込んでくる。

「カワイイ女だねぇ・・・」

溶かされはじめた私を見下ろして満足そうに口角を上げ。佐瀬さんはベルトのバックルを外し、ジーンズのファスナーにゆっくりと手をかけたのでした・・・。