鎖骨の下あたりに少しうねりのある黒髪が(うず)まったかと思うと、肌をきつく吸い上げられた。そのまま這った唇と舌が胸を執拗に食み、よそ見をした思考を呆気ないほど奪っていく。

「も、だめ、・・・させ、さ・・・ッ」

「・・・ンなおネダリは、教えてねぇぞ」

敏感な膨らみの頂点を、片方は指先で、片方は舌先で弄ばれて躰が仰け反る。

『欲しがれ』。
脳髄に直接響き渡る命令。

「あ、あぁ、も、・・・っと、ほし・・・」

喘ぎが漏れた途端、体勢を変えた佐瀬さんが太腿に手をかけ脚を割って、付け根に顔を埋めた。
さっきまでとは比べものにならない刺激を刻まれ、理性が()かれる。溶かされる。

日に日に容赦なく追い込まれて、溺れさせられる。
形まで憶えてしまって、他の誰も私を開かせることはできないと確信できるくらい。


奥まで突き上げながら、切羽詰まって呼吸を荒げていく貴方が。
低く呻いて果てるその刹那。

「ッ・・・美玲・・・!」

その刹那だけ。
『お前』でも『お嬢ちゃん』でもなく。

私の名前を振り絞る。
深さが増したあの日から。
本能のまま。
すべてを凝縮して。
一息に注ぐみたいに。


この上ない幸せに満たされて、余韻に浸る貴方の重みを受け止める。
愛という名の重みを受け止める。

うっすらと漂う、靄のような灰色の心許なさを打ち消したくて。
何もかもを開ききって。

髪一本、爪の先まで貴方で埋め尽くして。・・・いく。