愛しているって、今までも星の数ほどくれた言葉なのに。この時は包み込む温かさより、ひと言ひと言の重みを刻み込まれていく気がしました。

切れ長の眸が少し細まり、愁兄さまは私の頬に触れておもむろに続ける。

「佐瀬とは長い付き合いだから、僕なりに人となりは理解しているつもりだよ。・・・でも美玲のご両親やおじい様が同じように思うことは、難しいかもしれないね」

「・・・それも、分かっているんです」

睫を伏せて、短く覚悟も口にした私。
難しい、と優しい言い方をしてくれたけれど紛れもなく現実は。どんなに私を溺愛しているとしても、極道者だった過去を持つ佐瀬さんをお祖父さまが許すという、選択肢がないでしょう。

「その時は」

「美玲」

言いかけた私をやんわり遮って、頬を撫でていた指が一本、唇に押し当てられる。

「この件は僕が預かろう。佐瀬のことはもう少し、誰にも言わずにおきなさい。いいね」

ふわりと薫るように微笑むと、兄さまは顔を寄せて瞼にキスを落とす。
なんだかそれ以上は何も言えなくなった私は、ただ小さく頷き返すだけでした。