歳下だからと一実ちゃんを子供扱いしている風でもなく。例えるならなんでしょう。行きつけの居酒屋さんで、たまに顔を合わせる気の置けない常連さん同士。・・・みたいな? 二人は初対面の時からそんな空気感でしたっけ。

「あー・・・まあ気に入っちゃいるがねぇ」

ウインカーを出し、ハンドルをゆっくり左に切りながら貴方は気怠そうに。

「トモダチ思いのイイ嬢ちゃんでよかったな」

返った答えはどことなく、的を外されていたような気もしました。

「・・・それよりメシ食いに行くか」

「あ、はい」

「好きなモンでいーぞ。肉でも寿司でも」

これでもし私がスイーツバイキングに行きたいと言い出しても、心底呆れ顔をしながら連れて行ってくれるかもしれません。
私と目を合わせることもしてくれなかった、最初の頃の方が夢だったのかと思うくらい。声が柔らかくなったこと。・・・佐瀬さんは気付いているんでしょうか。

胸の中がふわりとほころび、そこで閃いたことを期待を込めてお願いしてみました。

「佐瀬さんがよく行くお店に連れて行ってください・・・!」

「オレの・・・ねぇ」

彼の口からボソッと呟きが漏れ、黙り込んで十数秒。
髪を無造作に掻き上げる仕草で、うんざりしたような溜め息を漏らす。

「・・・ンな健全なトコ、あったかよ・・・」