仕切りがないせいか、居住空間がわりと隅に偏っていますけど。開放感があって個性的な間取りのお部屋。・・・で、素敵です。もちろん褒めてます。

「そっちに座ってな」

「はい」

目線でしゃくられ、角の壁を背にした長ソファにちょこんと腰掛けた。
黒のローテーブルの上には、使い古して燻んだ色の灰皿が一つ。

少し離れた窓際にはカギかっこの形でボードが2つ置かれ、片方に大きな画面のテレビが乗り、もう片方はベッドとの区切りに。
作り付けのクローゼットも見当たらず、窓とベッドの間に、アパレルショップで見かけるようなシングルハンガーが2本、横並びをしてシャツやジャケットが吊るされていた。

家具も生活用品も最低限で、あまり生活感がないのは、あのアパートと変わらない気もして。佐瀬さんがその奥に消えた、キッチン脇の扉をじっと見つめた。

ここで貴方は、どんな日々を過ごしてきたんでしょう。
独りで?
何を思って。
だれかと?
温もりを別け合った夜もありましたか・・・?

知ったら寂しくなってしまいそうで。
知らない貴方が詰まっているこの部屋にいるのが少し。心細くなった私です・・・。