“最後”の感謝を込めて洗い物を引き受けると、シンクの周りを綺麗に拭きあげて流し元灯の明かりを落とした。
「ごめん。レイちゃんに片付けまでさせちゃったな」
先にソファに戻っていた征士君は、少し離れて立った私に申し訳なさそうに眉を下げて笑いかけます。小さく首を振り返せば、隣りに座るよう優しく促してくれました。
ガラステーブルの上には、葉っぱの模様が色違いのマグカップが二つ。オレンジ色の柄の方はミルクたっぷりのカフェオレ。・・・私のために新しく買い揃えてくれたんだと、すぐに気が付きました。
「・・・・・・征士君」
佇んだまま。今にも歪みそうになる眼差しを堪えて、俯き加減に躰の前で両手を握り込み。表情も声も強張っていたかもしれません。
「・・・レイちゃん?」
訝しそうにトーンが落ちた彼の声。
私は。
お腹の底にぐっと力を込め、“それ”を押し上げて喉元から懸命に振り絞った。
征士君の顔を見ることは・・・、どうしてもできませんでした。
「・・・・・・・・・会うのは、今日で最後にさせてください・・・っ」
放った自分の声をどこか。遠くに聴いていました。
その瞬間。部屋の空気ごと、彼の時間が止まったかのように。固まって動かなくなった。
点けっぱなしだったテレビだけが喋り続けていたけれど。
征士君から下されるだろう『審判』を待つだけの私の耳には、まるで砂漠の砂が流れるノイズにしか。・・・聴こえていませんでした。
「ごめん。レイちゃんに片付けまでさせちゃったな」
先にソファに戻っていた征士君は、少し離れて立った私に申し訳なさそうに眉を下げて笑いかけます。小さく首を振り返せば、隣りに座るよう優しく促してくれました。
ガラステーブルの上には、葉っぱの模様が色違いのマグカップが二つ。オレンジ色の柄の方はミルクたっぷりのカフェオレ。・・・私のために新しく買い揃えてくれたんだと、すぐに気が付きました。
「・・・・・・征士君」
佇んだまま。今にも歪みそうになる眼差しを堪えて、俯き加減に躰の前で両手を握り込み。表情も声も強張っていたかもしれません。
「・・・レイちゃん?」
訝しそうにトーンが落ちた彼の声。
私は。
お腹の底にぐっと力を込め、“それ”を押し上げて喉元から懸命に振り絞った。
征士君の顔を見ることは・・・、どうしてもできませんでした。
「・・・・・・・・・会うのは、今日で最後にさせてください・・・っ」
放った自分の声をどこか。遠くに聴いていました。
その瞬間。部屋の空気ごと、彼の時間が止まったかのように。固まって動かなくなった。
点けっぱなしだったテレビだけが喋り続けていたけれど。
征士君から下されるだろう『審判』を待つだけの私の耳には、まるで砂漠の砂が流れるノイズにしか。・・・聴こえていませんでした。



