恋は、秘密主義につき。

彼の言葉に感じ取れた、恐らくは純粋なプライドと向上心に私は曖昧な笑みを濁して。
そのあとも他愛のないお喋りを挟みながら、一緒にお料理を仕上げていきました。

油揚げに、水煮の大豆とレンコンも合わせたひじき煮。定番のキュウリや人参に加え、ブラックペッパーを多めに、隠し味で果汁のゆずを混ぜ合わせたポテトサラダ。汁物は有り合わせで、中華風玉子スープ。
最後に、深めの器に盛ったご飯に玉子そぼろを敷き、斜め切りにした生姜焼きを乗せて上から刻んだ分葱を散らせます。



「インスタに上げるわけじゃないけど、写真撮って永久保存しときたいな」

ガラスのリビングテーブルに並べた夕ご飯を感慨深そうに見入っていた征士君は、お行儀よく手を合わせて早速、鶏の生姜焼き丼から箸を付けてくれます。
出来栄えが気になって隣りを窺うと、口許を片手で覆って「・・・やばい」と呟きが漏れました。

「自分の誕生日に、こんな美味いの作ってもらえたなんて、嬉しすぎてほんとにヤバイな俺」

大袈裟な、って一瞬思った自分を戒めたくなったくらい。・・・心から愛おしむように私を見つめて、幸せで溢れそうな満面の笑みを崩すのを。
到底、平常心で受け止められずに視線を料理に逃し、必死に笑顔を貼り付けた。

「良かった、です。薄味かなって思ったんですけど・・・」

「ちょうどいいよ。・・・ん、これさ、また作って。レイちゃん」

他にも箸を伸ばした征士君が甘やかな顔を振り向けるごとに、心臓に矢がのめり込んで。
生気を失っていく気がしました。
もう。自分の口から出る言葉すら、意思とは無関係の作り物のように。

どれを食べても噛み応えを感じられず、舌が麻痺してしまったように味も何も、分かりませんでした・・・。