公園を出ると、私が通ってきた道を辿って戻るように。
バイパスに架かる歩道橋を渡り、ドラッグストアの前を過ぎ。家に向かうには次の路地を左。

けれど佐瀬さんは、その次の路地を左に折れた。そしてまた左。
住宅街というより、アパートの密集地という印象の一画。
ベージュと焦げ茶色のツートンカラーの、玄関ドアが向かい合ったタイプのアパートの一階。102と印字された表札プレートが付いたドアの鍵穴に、パンツのポケットから取り出した鍵を彼が差し込むのをぼんやり見つめていました。

「・・・ドーゾ」

気怠そうないつもの空気で私を見やり、中に入るよう促す彼。

「おじゃま、します・・・」

廊下の左手に洗面所とバスルームが見え、開け放たれた右手の扉の奥に佐瀬さんの後をついて進む。
するとそこは、少し形が変わっていたけれど、右奥にキッチンスペースがある9帖くらいのリビングダイニング。

とは言っても。キッチンには冷蔵庫と電子レンジが置いてあるくらいで、お鍋や調味料なんかの姿は全くなく。
リビングも、テレビ台とテレビ、三人掛けのソファにリビングテーブルが仕方なく置かれているような。
人が暮らすにしてはシンプル過ぎて、生活感も温もりもない部屋でした。