ふーちゃんと一緒だった帰りの電車の中でも、どこか心臓が落ち着かなくて、あの時は。

・・・あの時にはきっと。もう。



一度大きく車内が揺れて小さくよろけそうになったのを、がっしりとした腕が無言で私の肩ごと引き寄せた時。

喉まで出かかった何かが。溢れそうになって。
それを必死で飲み込んだ。

『言ってはいけない』

躰中の細胞が軋んで、一斉にブレーキをかけたみたいに。
小さな悲鳴のような痛い音が耳の奥を突き抜けた。と思った。
刹那、歪みそうになった眸を俯かせ、きゅっと奥歯を噛みしめる。



瞼の裏を掠めたのは、愁兄さまと征士君の。・・・笑みのほころんだ顔でした。