「誕生日ねー」

ふんわりカールの毛先を指で弄びながら一実ちゃんが、うーん、と可愛く呻る。

「まあ普通の男ならだいたいが、『美玲を欲しい』って言うわよねー」

事も無げに言うので、むせそうになりました。

「そんな簡単には、あげられません~」

「よね。じゃあ、なにか物で渡すしかないでしょ?」

至ってシンプルな答え。
モスコミュールのロンググラスに口を付けてから、串から外した鶏つくねをぱくっと頬張る彼(彼女)。
今日は金曜なので、半個室タイプのカジュアルな居酒屋さんに来ています。
店内はとても賑わっていて、笑い声や乾杯の音頭がどこからともなく届きます。

私もだし巻き玉子を一切れ、自分の小皿に取り分けて。

「その・・・、他に出来ることってあると思いますか?」

「プレゼント以外で?」

コクコク。頷く。

「まあ、許婚クンの部屋で美玲の手料理を振る舞うとかだったら、絶対に喜んでくれると思うけど」

なるほど、いい考えです!
顔をぱっと明るくすると。

「そのあとで、自分も食べられる覚悟があるならおススメする」

一実ちゃんは、にっこり笑って言ったのでした。