な、なに……これ……。
龍の翼にあったのは……
複数の、傷跡。
出ているツノも見てみると、右のツノの先が欠けていた。
翼もツノも、痛々しく傷ついている。
どうして……?
どうしてこんな、傷だらけなの……?
もしかして、この傷を隠すために、ずっと人間の姿でいたの……?
でもどうして?
怪我したんなら言えばいいのに……!
なにがあったの!?
転んだの、本当……?
だとしても、こんなにならないよね?
誰かにやられた?
だとしたら誰に……?
こんな傷……普通ならつかない……。
何があったのか聞きたいけど……。
……でも、龍はこの傷を隠したい理由があるから、こうやって自分の部屋以外では翼やツノを出さないでいた。
私にも、隠し通すつもりだった……。
私だって隠し事してるんだ。
こうやって忍び込んだことさえ、許されないはずなのに……。
……なにも、聞かないでおこう。
龍が話してくれるまで。
話したくないなら、それでいい。
本当は、こんなに傷だらけの龍を放っておきたくはない……。
だけど……。
勝手に見て、勝手に知ってしまったのは、本当は良くないんだから。
……龍。
何かあったら、頼っていいんだからね……。
私は、心配と不安を押し殺して、龍の部屋から静かに去った。
何があったのかはわからないけど、何かあったことは確かだ。
私はこの日、龍の傷のことで頭がいっぱいで、ぐっすり眠れなかった。