「片桐さん」


「あ」




また、今日も柳くんは私を見つけると声をかけてきた。




「ちょっと、話さない?」


「え?」




自販機に飲み物を買いに行った帰り、柳くんにそう言って引き止められた私。


今日は、柳くんの周りにいつもいるメンバーの人たちがいない。


柳くんだけだ。




どうしたんだろ?


珍しい。




何か、用があるっぽい。


その時、龍の言葉が頭によぎった。




『あいつに何か誘われても、ついてくなよ。』




…………。


あの龍があんな真剣な顔して言うんだもんな。


心配させちゃダメだし、ついてはいかないでおこう。




「話があるんだ。ちょっと、向こうで話してもいい?」




自販機から近くの、階段の下を指差す柳くん。


あまり人通りはなくて、うっすら暗い所。




よ、よりによってこんな時に誘い出されるとは……。




「……あ、私、凛にお茶買ってきてって頼まれてたんだった!ごめん、自販機の所でもいい?」




龍に言われたように、とりあえずついていかないよう、別の場所を提案してみた。


凛にお茶を買ってきてと頼まれたのは……嘘。


そう言わないと、不自然かと思って。


それに自販機のところだと、わりと人通りもあるし。




「うん、大丈夫」




ニコッと、柳くんは優しく微笑む。




ごめん柳くん、嘘ついちゃって……。


すぐに了承してくれたし、特に怪しい感じはないんだけどな……。


龍、何を心配してるんだろ。




そして、自販機の前に着いて、先に話を聞くことにした。




「あ、話って何?」


「お茶、買わなくていいの?」


「先に話聞くよ」


「…………引かれるかもしれないけど」




柳くんは、なんだか気まずそうに少しうつむく。


いつものフレンドリーな感じの柳くんとは、少し違うように見える。




「?」




私は、そんな柳くんの雰囲気を感じて、首をかしげた。




「俺……実はさ」




言葉を詰まらせるように、声を絞り出す柳くん。


なんだか、真面目な顔をした柳くんの口から、何の話が飛び出してくるのだろうと思うと、唾をごくんと飲み込んでしまうくらいの緊張感が走る。




「実はさ、俺……」


「う、うん」




そして、うつむき加減だった柳くんが、パッと顔を上げて今度は私の方をしっかりと見た。


そして……。