「……ん、そういえば。龍、さっき柳くんに自分のこと話してたけど、よかったの?」




私は、さっき龍が柳くんに自分が「捨て子」だと言っていたことについて、気になったので聞いてみた。




「んあ?あぁ、あれか?別に、本当のことだし。隠す必要ねぇからな。あいつが唯と「似てない」って言うから、説明しただけだ」


「そう……」




龍は特に、気にしてなさそう。


たしかに、龍って嘘つかないし、純粋で正直者だからなぁ。




私は、周りに龍が捨て子だということを隠している。


龍に、自分が捨てられたことをどう思っているのか、聞いたことがない。


もし私が、生まれてすぐ捨てられた子どもだと後々知ったら、ショックで立ち直れないと思う。


もし、何か理由があっても、捨てたことに変わりはない。


一生傷ついて生きていくと思う。


でも龍は、まるでそんな素振りを見せない。


全然“平気”って感じで。


普通なら、あまり自分の過去についてとか、家族関係とか、触れられたくない領域なんじゃないかと思ったけど……特に問題なさそうに感じさせられる。


私は、龍がいてくれることに誇りを持ってるし、龍が笑ってそばにいてくれる毎日は幸せ。


だけど……龍は、本当になんにも思ってないのかな?


全然、“平気”なのかな?


私はちゃんと、龍を……龍の心を、守ってあげられているのかな。