「唯ー!俺の靴下片っぽ知らないー??」
龍が、ひとつだけ靴下を持ってブラブラと揺らしながら私に見せてくる。
ちなみに、私はまだ寝ていたんだけれども。
いつの間にか部屋に入ってきて、顔を覗きこまれていた。
「……っりゅう〜……勝手に入って来ないでって、何回言ったらわかんの!」
「ごめんごめん!どうしてもこの靴下がよくて!」
片手を顔の前にやり、ごめんポーズをする。
「ッ知るかぁ貴様の靴下なんざぁ!!!」
そんな龍を振り払うように、布団をバサァッ!とかぶせてやった。
ったく!
なんなの朝っぱらから!
「わぁ〜怒んないで!!」
「…………てゆか、今日、日曜でしょ?」
「うん!友達と遊びに行くんだ!」
「……ったく〜、元気だなぁもぉ。」
頭をボリボリとかきながら、私はムクっと起き上がる。
「なぜか片っぽだけがねぇんだよ〜」
「…………。」
私は、眠いんだが。
「唯様助けてお願い俺の靴下…………あ!!」
「!?」
龍の突然の叫びに、方がビクッと跳ねると同時に私の目はパッチリと覚めた。
「あった!!」
「は、どこに?」
「唯のベッドの下!」
「なんで私の部屋にあんのよ!?」
「昨日ここで寝てたからかな?」
「なんで私の部屋で寝てんのよ!!?」
「え、こっちの方が落ち着いたから。」
「…………あんたねぇ。てか、昨日履いてたの履くの?」
「家で履いてただけだし大丈夫っしょ!」
「……あぁ、そう。」
「んじゃ行ってくるわー!」
「はいはい、いってらっしゃ……って龍!!翼しまって行きなよ!!」
「わかってるー!」
騒がしく部屋を出ていこうとする龍の背中からは、太ももくらいまで伸びた大きく立派な赤い翼が出ている。
家から出る前にしまうんだと思うけど……。
15年間一緒に過ごしてきて、龍が外出する直前まで翼が出ていると、未だにちょっと……焦る。