「龍〜!帰ってるー?」
家に帰ってきた私はリビングにパタパタと走っていき、帰っていたらリビングにいると思われる龍にさっそく呼びかける。
「帰ってるよー!どうしたの?」
私がリビングに顔を出した時には、ソファに座ってテレビを見ていた龍から返事が返ってきた。
「……あのさ、龍。最近、外で翼とか出した?」
「ん?いや、満月の日以来出してないけど」
「つい、うっかり、人の前で翼出しちゃったとかも、ない?」
「うん、ないない!」
「け、喧嘩とかも、してない?」
「するわけねぇじゃんー!だいたい喧嘩する相手もいねぇよ〜!」
「……だよね。」
淡々と答える龍に、特に隠していることはなさそう。
もしかしたら、自分で気づいてない時に翼が出ちゃってる時があるんじゃ?
って思ったりもしたけど……
龍、そこまで危機感ないやつじゃないし。
むしろ、翼とか、自分の正体に関してはしっかり隠し通すように心がけてるし。
満月の日は別だけど……。
「どうかした?」
龍が、ソファから立ち上がり私の前までやってきた。
「……あ、いや……。学校でね、噂を聞いて……」
「噂?」
龍は首をかしげる。
「うん。人間に翼が生えてる“バケモン”が、この街で出るって噂……。しかも、人間を襲うとか……」
「なにそれ、翼って、俺みたいじゃん」
「そうなの。でも、龍は人なんて襲わないじゃない?だから、なんでそんな噂があるんだろうって思って……。もしかして、満月の日に、誰かに龍の姿見られたのかな……」
「俺あの時ちゃんと見てたけど、誰も俺らのこと見てなかったよ。俺の察知力は優れてるからな、人が見てたら絶対わかる」
たしかに龍は察知力がすごくて、人の目に敏感だからすぐに気づくこともできるけど……。
でも実際噂が出はじめてるわけだしな……。