ドキドキと心臓をならしながら、俺は下駄箱からシューズをだした。
もうすぐで菜穂に会える…。
なんてことを考えながら、教室に向かった。
いじめなんてこわくない。自分が変わればいいんだ…。
そう自分に言い聞かせて教室に入る。
すると、ガヤガヤした教室が静まりかえり、一斉に目線が俺の方へ向けられる。
するとその時
「おい。なに堂々とはいってきてんだよ。おまえは廊下が1番お似合いだ。」
と誰かが言った。
そういう風に言われるのはとてもこわい。
でも、せっかく菜穂が変われるチャンスをくれた。このチャンスを逃すわけにはいかない。
そう考えていると無意識に
「なぁ、こんなことやって楽しいか?」
とうい言葉が口からこぼれた。
「はあ?楽しいに決まってるやん!!なにいよるんこいつ」
そう言われて腹が立ってきた。
「人をゴミくずみたいに言って、楽しい人なんかおるわけない!」
「な、なんやこいつ…」
「もう、やめようよ…。前みたいに友達に戻ろうよ…。」
「…」
やばい…言い過ぎたか?
そう思い、おそるおそる顔をあげたら、クラスのみんなは困った顔をしていた。
すると、
「おれ、クラスの誰かがいじめられるの見たくない。」
クラスの誰かが言った。
「私も、こんなの毎日見たくない。」
その言葉を聞いて胸が熱くなった。こんなにも勇気をだせば変わる。そして…
「ごめん…。俺がこんなにもちっぽけだったから、裕太に八つ当たりしてしまった。ほんとにごめん…。」
と、陽人が言った。
俺はびっくりした。自分が自分を変えたんだ…。
こんなにも勇気をだしたら変われるんだね…。菜穂…。
「いいよ、陽人。俺も悪かったし…。」
「また友達に戻れるか?」
「もちろん!」
嬉しい…。陽人と今までで1番わかり合えた気がする。
俺、人生の中で1番幸せだ…。
そして、この事を1番に伝えたいのは、
菜穂…
早く会いたい、伝えたい…。
そして俺は、真っ先に屋上に向かった。




屋上に行くと、菜穂がこっちを見て、にっこり笑った。
そして、
「なんか、裕太嬉しそう!なんかあった?」
「うん。実はね、俺、勇気を出して陽人にいじめをやめてくれって言ったんだ。」
「そしたら?」
「八つ当たりして悪かったって!それで、友達に戻ってくれないかって言われて…。」
そう言った瞬間涙がでた。
でも、この涙は今までのとは違う…。

嬉し涙だった。

涙がでた瞬間、俺の背中に肌の温もりを感じた。
なんだろうと思って振り返ると、菜穂が俺に抱きついていた。
幽霊だから、触れられないはずなのに、菜穂の肌の温もりを感じれることができるなんて…。
「裕太、私、とっても嬉しいよ!嬉しすぎるよ!」
そう菜穂が言った瞬間、菜穂の目から涙が溢れ出していた。
「私、今までで1番嬉しいよ…。」
そう菜穂が言った瞬間、俺は菜穂を抱きしめた。
触れられないのに、幸せだ…。
この幸せがずっと続きますように…。
そう思ってると、菜穂が、
「大好きだよ。」
と、俺の耳のそばでささやいた。
やばい…。こんなこと言われたら、俺、顔が赤くなるに決まってる。
それは友達として?
気になる…。でも、聞けるわけがない。
「俺も好きだよ。」
なんて、言いながら、期待してる俺。
でも、何に期待してるかぜんぜん分かんねぇ…。

そんなことを考えながら、菜穂の方を向くと、菜穂の耳とほっぺが赤く染まっていた。

可愛すぎる…。

どく、どく、どくどくどく…
鼓動が早くなっていく。
静まれ、俺の心臓…。
菜穂に聞こえてないかな…。
すると菜穂が、
「あのね、今まで聞けなかったんだけど、えっと、私たちって友だ…。やっぱりなんでもない!」
と言いだした。
なんて言おうとしたんだろ…。
その時、キーンコーンカーンコーンとチャイムがなった。
「あ!やべ!ホームルーム行かなきゃ…。また昼休みな!」
「うん!!待ってるよ!」