満月が照らしつける中、私は屋上にいた。
今は冬だから、寒いのだろうけど、幽霊の私には寒いと感じない。
生前は冬なんて嫌いだったのに、その寒さが恋しくなるとは思っていなかった。
生前の私は心臓が弱く、中学3年生の時に余命宣告された。
その時は、すごいショックだった。
死んだら、大切な友達にも会えなくなる。
家族がいないだけましなのかも…
そんなことだけ思いながら毎日過ごしていた。
そのうち、友達とも距離を置くようになった。
だからなのかな…。
今日屋上であった悲しい目をした少年…裕太をほおっておけなかった。
その目は、死ぬ前の私の目に似てた。
だから、助けたいって思った。
まあ、さすがに幽霊だってことは驚かれたけど、こわがりもせず話をしてくれた。
自分がいじめられていることを話すのは勇気がいることだから正直嬉しかった。
裕太と話をしているうちに、胸がキューってなって苦しくなった。
この気持ちがなんなのか考えてもわからない。でも、特別な感情だって思ったんだ。
明日も会えたらいいな…。
なんて、そんなことを幽霊が思ったら失礼かな?
余命宣告をされてから、こんなに笑ったことあったっけ?
なんて思ってしまう。
裕太といると、全部が明るく思える。
裕太といつまでもいたい…。
でも、私には秘密がある。その秘密がバレてしまうとき、裕太は私を嫌いになってしまうかも知れない。
そう思うと、こわくて言えない。迷惑をかけたくない。
幸せと不安を感じながら、私は、屋上で一夜を明かした。