自分の部屋に戻ると、久々にアルバムを手にしてみた。
そこには、幸せそうにしている自分がいる。
羨ましい…。
ついつい過去の自分に嫉妬してしまう。でも、こんな幸せな自分を見たのはいつぶりだろう。アルバムを見ていると、ある写真に目が止まった。姉さん…。


俺の家族は、母さんと父さん、そして俺の3人家族。でも、昔は4人だった。
俺には、2歳年上の姉さんがいた。姉さんの名前は、里美。俺と姉さんはとても仲がよかった。姉さんといる時間はかけがえのない時間だった。それが普通の幸せだと思っていた。その頃、俺は小学校3年生だったから、普通の幸せがたやすく崩れることを知らなかった。


ある日、一本の電話がかかってきた。
その日は、俺の誕生日の12月24日だった。
クリスマスということもあり、俺は浮かれ気分だったし電話を取る気は無かった。
数分後…
また、電話がかかってきた。
2回もかけてこられると、でないのは失礼だと思った俺は電話にでることにした。
その電話は父さんからだった。
「里美が今、病院で息をひきとったよ………。事故死らしい……」
その言葉を聞いたとき、息ができなかった。
お姉ちゃんが死んだ??そんなもの嘘に…決まってる。
「何言ってんだ!!姉さんは死なない。姉さんが死ぬはずないもん!」
からかおうとしてるんだ!お父さんのバカ!
「裕太。嘘じゃない…。はやく病院に来なさい。歩いて来れるだろう??」
父さんの声は本気だった。だから、こわくなって走って病院に行った。
そこには、冷たくなった姉さんと、泣き崩れているお母さん、そしてうつむいているお父さんがいた。
嘘……だ…。おねえ、ちゃん、が…死んだ??
そう思うと涙があふれていた。
苦しい…つらい…憎い…
そんなことを思ってしまう自分が1番憎い。
でも、向き合わなきゃって思った。
強くなって、天国にいるお姉ちゃんに褒めてもらうんだ!そう思った。

そんなことを思い出すなんて…。
いじめにあってから家族のことを考えたくなかった。だって、迷惑をかけてしまうと思うから…。
でも、思い出すことができたのは、菜穂のおかげ。
菜穂のおかげで家族と向き合うことができたんだ。
窓の外には、まん丸い満月があり、満月がこちらを照らしているようだった。