ガヤガヤとした教室での1日がまた始まる。
僕には友達がいないし、むしろいじめられている。
僕へのいじめが始まったのは、高校1年の夏頃だった。
その頃は友達もいっぱいいたし、いじめとはほど遠い存在だった。
でも、その幸せは一瞬で消え去ってしまった。
僕の友達だった陽人には好きな人がいた。
その子は、優しかったのでそこそこ男子にもモテていた。僕も、その子のことはいい子だなと思っていた。
でもある日、その子から、「好きです」と言われた。いや、言われてしまった。その事を知った陽人は、僕を殴り、
「おまえなんか死んでしまえばいいんだ!!」
と言った。
それがいじめの始まり。
時には、上履きを隠されたり、時には、トイレの水をかけられた。
その事がいやになり、毎日屋上にいくようになった。
でも、その事が僕を変えてくれるなんて思ってもいなかったんだ…。

いつも通り、階段を上って、屋上の扉を開ける。
そして、屋上の上から地面を見つめる。
死にたい……。
そう思った瞬間、背後から
「ねぇ、死にたいの?」
と、言われた。おそるおそる振り返ってみると、そこには可愛い美少女が立っていた。
「死にたいんだったら、私と話をしない?」
「え…でも、僕と話したら君までいじめられる。」
そう言い返すと、
「なんで君は、そんなに人の心配をするの??」
と、言われた。その言葉を聞いてびっくりした。いじめられてる人をかばうと、自分がいじめられるのに…。そう考えていると、
「私がいじめられるって思ってるでしょ。それなら大丈夫!私を見てみて。」
そう言われたのでみてみたら、息が止まるかと思った。だって、その子のカラダが透けてるから…。
「私、幽霊なの。心配しないで!!」
いやいや、なんでそこまでポジティブなんだ…。そうツッコミたかった。
「私の名前は、菜穂。あなたの名前は??」
「松田裕太です…。てか、なんで君はここにいるの?」
「えーと、いるところがないから??」
いやいや、なぜ疑問形?この幽霊、ツッコミどころが多すぎる…。
「というか、なんで君は幽霊になったの?」
そう言った瞬間、後悔が押し寄せてきた。この質問はやばかったかな…。
「心臓病。心臓病で死んじゃった。…でも、心配しないで!!家族はいなかったし…。」
「ごめん。あんなこと聞いちゃって…。」
「ううん!それより、私のこと菜穂って呼んで!私も裕太って呼ぶから。」
「分かった。」
少し怪しかったけど、菜穂としゃべると心が落ち着く感じがした。
「私も自分のことを話したから、裕太も話して!昔、死んだお母さんが言ってた。つらいときは、我慢せず誰かに話せって。」
おいおい…。初めて会った人にこんな重い話をしていいのか?
でも、菜穂なら、いいきがしたんだ。
「僕は、大事な友達がいたんだ…。その子には、好きな人がいた。でも、その子は僕を好きになった。それがいじめの原因。僕は、いじめられて当然…なんだ。」
そう言った瞬間、涙があふれた。
ほんとは、気づいてほしかったんだ。でも、そんなことは誰にも言えなかった。親に言ったら心配されるし、自分自身が傷つくと思っていた。でも、なんでこんなに心がスッキリしてるんだろ…。
「そっかぁ。苦しかったんだ。大丈夫だよ。私がいるから。」
菜穂はそう言うと、僕の頭を撫でてくれた。その時、
キーン コーン カーンコーン
と、チャイムがなった。
「ごめん。教室戻らなきゃ。」
「うん!またね!」
またね…か。
その言葉を聞いてなぜかホッとした自分がいた。
「また、会えるよね?」
「もちろん。いつでも待ってるから。」
その時、幸せだと思った。学校に来て、幸せなことなんてあったかな…。
「ありがとう。」
そう言って、僕は屋上をあとにした。