練習試合だというのに、会場のグラウンドには観戦者がたくさんいた。
中学生の時の練習試合といえば保護者の人しかいなかったので、その数に驚いた。


「人、多いね」

「あー、多分水高の人目当てだと思う。強いらしいし、なんかすごいイケメンがいるって彼氏が言ってた」

それを聞いて、すぐに虎頭先輩だと分かった。


「莉々の先輩は?」

「うーん、見つからないかな」

「そっか。まあ試合始まれば出てくるかー。あの辺で見よ」


ナナちゃんが指差した方向は、西高側からも水高側からも少し離れた、小高い位置にある芝生の上だった。

選手たちがグラウンドに現れたところで、すぐに虎頭先輩の姿を見つけた。周りの人とオーラが違うのだ。

色眼鏡で言っているのではなく、何というか、虎頭先輩には他の人とは別格の、カリスマオーラというか…とにかく、先輩の周りを漂う雰囲気が、周囲とは違う。だから先輩は目立つのだと思う。


試合開始の直前に来たので、すぐに試合は始まった。



「うわ、水高のあの人すご。きっと皆、あの人目当てだね」


ナナちゃんがそう言ったのは、やっぱり虎頭先輩だった。

でも、本当その通り。
先輩は誰から見ても、すごいのだ。
去年の選手権はテレビ画面越しにだったので、高校生の先輩の生のプレーを観るのは初めてだ。