「綾乃って言うんだね、いい名前!綾乃くんって呼んでいい?」


彼が本をみながら呟くように言う。


「僕はこの名前が嫌い」


「どうして?素敵な名前なのに」


「女子みたいな名前だから」


そんなことないのに。


「ねえ綾乃くんってさ……」


本を片していたのを中断させて私を真顔で見る。


「呼ぶなら“月野”って呼んでください」


彼は真っ直ぐでサラサラな髪の毛をなびかせて廊下へ出ていってしまった。