今朝の奏は、いつものように優しく、僕を送り出してくれた。

昨日のことは忘れた?

まさか、そんなことはないと思う…

きっと、忘れようとしてくれてるんだ。

後輩とは何もない。

信じて欲しい。

だけど、疑うってことは、僕のことを好きだからだよね。

奏を心配しながら、いろいろなことを思い巡らせた。

僕は、奏と遊んだ子どもの頃に住んでいた町に行くつもりだ。

今日は、仕事が休みだから、都合が良かった。

奏には何も言わずに、仕事の振りをして出かけた。

新幹線に乗って、在来線、バス…

ずっと窓の外の景色を見ていた。

だんだんと懐かしい風景が、僕の視界に入って来る。

僕らの町に、僕は再び足を踏み入れた。

もう二度と来ることは無いだろうと、そう思っていたのに…