満と奏はドアを挟んで互いに精一杯引き合いをする。
「じゃあ、無理です。大体、電話線切って家に立てこもるなんて卑怯ですよ」
「ここは俺の家だ。自分の家に立てこもって何が悪い」
「別に悪かありませんよ。ただ、しっぽぐるぐる巻いて犬小屋にうずくまる負け犬のごとくな態度が男らしくないって言ってるんです!」
「何だと!?」
「何ですか!?」
互いの視線がぶつかりバチバチと火花を散らした。
しばらくして満は手の力をフッと抜き、突き出していた足を引っ込めた。
こんなことをしていても埒が明かない。
ドアどころか作家の気持ちにまで鍵がかかってしまう。
武長 奏の原稿を受け取って帰らなければ困るのは確かだ。
しかし、満は無理強いをしたいわけではなかった。
彼が納得して書き上げなければ意味がないのだ。



