恋は小説よりも奇なり


思いのほか話が盛り上がって、店に迷惑を掛けないようにファミレスのドリンクバーを利用した。

「それで、早見さんはどうして私に会いたいと?」

もう何杯目かになる飲み物を席へ運び、満は珠子に思い切って尋ねてみた。

食事中、色々な話をしたがいちばん知りたかったのはこの事だった。

「そうね、それ気になるよね」

「えぇ、まぁ……」

珠子は持ってきたばかりの紅茶をすすって一息つく。

「先生――…作家の武長 奏に誕生日プレゼントをあげたんだよね。紺色の万年筆」

満の全身に衝撃が駆け巡った。

公園のベンチに置き去りにした万年筆が彼の手に届いていたなど夢にも思っていなかったから。

あの日の夜から満の頭の中はずっと後悔だけだった。

彼の事を想って選んだはずのプレゼントなのに酷い渡し方をしてしまったから。