恋は小説よりも奇なり


武長 奏の担当ということで満は随分と身構えてしまっていた。

予想だにしない問いかけに唖然として「いいえ、何も……」と短く返事をしただけの反応となってしまった。

「良かった。好きなもの注文して。待たせちゃったお詫びも兼(か)ねてご馳走しちゃう」

「いや、それはいくらなんでも申し訳ないというか……」

満は全力で遠慮する。

流石に顔を合わせたばかりの相手にすんなりとご馳走してもらうほど図々しくはなれない。

「遠慮しないの。こういうのは若者の特権みたいなものなんだから甘えないと損よ」

とっつきにくさを全く感じさせない笑みで、珠子は満の前にメニューを差し出す。

満は半ば押し切られるようにそれを受け取って目を通した。