「遅くなってごめんなさいね。編集長につかまっちゃって……。でも言い訳はダメね。本当にごめんなさい」
「いえいえ、お仕事が忙しいことは重々承知していますから。気にしないで下さい」
満は気にしないという風に首を横に振ると「どうぞ」と珠子を席へと促す。
彼女は促されるままに椅子に腰を下ろした。
「改めまして、武長奏の担当編集者 早見 珠子と申します」
ビジネスバッグから名刺を取り出して、珠子は慣れたように自己紹介をした。
「ご丁寧にどうも。瀬戸 満です」
満は名刺を両手で受け取り、自分の名刺こそ無いが自己紹介だけはきちんとする。
「早速なんだけど、もう何か食べちゃった?」
自己紹介が終わった途端、珠子からはさっきまでの緊張感が跡形もなく消え去って、代わりにあっけらかんとした問いが飛んできた。



