恋は小説よりも奇なり


「皆、お疲れさん」

軽やかで明るい声が編集部に響き渡る。

専務取締役である大和だ。

社員が次々と「お疲れ様です」と反応する。

「たーまちゃん、お疲れ」

大和は珠子のデスクへ足を運んだ。

「お疲れ様です、専務」

珠子は仕事の手を止め、座ったままで上司に対して一礼した。

「なぁ、奏の様子どうだった?」

彼の質問の意図を珠子は正確に理解する。

奏の誕生日が過ぎるといつも同じ問い掛けをするのだ。

好きな人の気持ちを知りたがる乙女のようで可笑しい。

「今年も先生が受け取ったのは専務のプレゼントだけで――…」

例年通りの返答をしようと言葉を紡ぐ珠子だったが、急に思い出したように「あっ!」と声を上げた。

「いましたよ!専務以外で先生にちゃんとプレゼントを渡せた人」