恋は小説よりも奇なり


「勘違いするな。これは礼でもなければ返しでもない。謂(い)わば、手切れ金のようなもの――…手切れ本だ」

「全然上手くないんですよ……。貴重な読者を減らす気ですか?」

ワナワナと怒りに拳を震わせる珠子。

「アレ一人で左右されるような仕事をした覚えは無い」

「あっ、高飛車発言」

「何とでも言えばいい。とにかく、この本を瀬戸 満という人物に渡しておいてくれ。詳しくは大和にでも聞けば―――」

まだ奏が喋っているにもかかわらず「嫌です」と珠子はきっぱり断りを入れる。

それはもうスーパーカーでも通り過ぎたぐらいの俊敏さを思わせた。

「担当作家のイメージダウンに繋がるようなマネをどこのバカ編集がやるんですか。どうしても渡すというのなら先生がご自分でどうぞ」