恋は小説よりも奇なり


武長 奏が他人からのプレゼントを受け取ったなどということは天地がひっくり返るほどの出来事だ。

明日、北極が南極になっていてもなんの不思議もないと思えてしまう。

珠子はにやにやとほくそ笑んだ。

「その気味の悪い笑い方は止しなさい……」

「すみません。でも顔が勝手ににやけちゃって……」

珠子は緩みきった頬を引きしめようと自分の頬を軽く叩く。

戻ったかと思えばすぐにまた緩む。

まるで、クラスメイトの噂話を知った時の中学生だ。

奏は珠子の顔を極力見ないようにして、残りわずかのシミを拭き取る。

シミだらけになったティッシュを丸めてゴミ箱へ捨てた。

そして、その足でリビングを離れ、小説を一冊手に持って戻ってきた。