恋は小説よりも奇なり


おかげで、数秒前まで綺麗だったノートが茶色いシミで大惨事だ。

「何やっているんですか!?先生」

びっくり眼の担当編集者。

コーヒーでゲホゲホ咽(むせ)返る小説家。

「私、吐くほどおかしなこと聞きました?」

汚れた資料を布巾で拭きながら、珠子は不思議そうな顔をした。

奏はティッシュで自分のノートやカップを拭きつつ「いや別に……」と誤魔化す。

「まるで、誰かからのプレゼントを突っ込まれてドキッ……みたいな反応じゃないですか。そんな三流ドラマみたいな展開そうそうあるわけ……」

珠子は冗談っぽく例え話を出す。

奏は言葉も出せず、コーヒーのシミを拭く手も止まってしまった。

「――…マジですか!?」

彼の反応に珠子が大げさに驚いた。