恋は小説よりも奇なり


珠子と奏の打ち合わせはいつも熾烈(しれつ)を極める。

スイッチオン状態の二人は、仕事に対する愛故に自分たちの歳も忘れて熱中してしまう。

終わった頃にはエネルギー切れの状態。

「先生、今日もブラックですか?」

珠子はインスタントコーヒーを入れたカップにお湯を注ぎながら問う。

「無論だ」

カップをリビングへ運び一つは奏の前へ、もう一つは自分の前へ置いた。

「ねぇ、先生?」

ソファーへ腰をおろす珠子がおもむろに奏へ声を掛けた。

片手にコーヒーカップ、もう片方の手に万年筆を持ってノートに打ち合わせ内容をまとめ始めた奏は「何だ?」と適当に返事をする。手は休めない。

「先生……そんなオシャレな万年筆なんて持っていましたっけ?」

珠子の何気ない質問に、奏は口に含んでいたコーヒーを勢いよく噴き出した。