恋は小説よりも奇なり


「俺が食いたいの。奏、お前はソウソクだけ吹き消せばそれでいい」

「人の誕生日をなんだと思っている――…」

奏の指摘は尤(もっと)もだと満も心の中で同意した。

誘いを受けた時から主役を丸無視な節は見え隠れしていたが最後まで丸無視だ。

「武長奏が生まれた日という名目で好きなだけ飲み食いできる日だろ。言ってみれば、バレンタインデーとかと同じようなもんさ。
誰かが何かをした記念日という名目で、自分のために行動を起こすイベント」

「アレは生まれた日ではなく処刑された日だ。例えが悪い」


問題はそこじゃない……と満は苦笑い。


「そりゃ失敬」

大和がおちゃらけた感じで謝罪する。

反省の“は”の字もない。

「俺は三十四回目の誕生日をもってお前との縁を切ろうと思うのだが――…」

「奏、お前はそれと全く同じことを去年も俺に言ったぞ」

「そうだったか……?」

「そうだった」

憎まれ口を叩き合っても友人でいる奏と大和の関係は実に微笑ましくて。

樹と満はお互いに顔を見合わせて笑った。