恋は小説よりも奇なり


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その頃、満は大学内の図書館で貸し出し業務のアルバイトをしていた。

大学のアルバイトは時間に融通が利いて、なにより好きな本に囲まれて働ける。

「今月の二十八日、武長さんのお誕生日なんだって。大和さんがこの日にお誕生日会をやらないかって言っているんだけど、満も行くよね?」

貸し出しカウンターを挟んで樹が満を誘う。

大学図書館は一般開放されており、学生でない樹も自由に出入りできる。

いつから“大和さん”なんて呼ぶほど親しくなったのか……などと思いながら、満は本の貸し出し希望の学生に「返却は二週間後です」と伝えてそれを渡した。

「でも、そういう事してもらって喜ぶような人には見えないけど」

奏が誕生日会ではしゃいでいる光景が今ひとつ想像がつかない。

満は訝(いぶか)しげに首を傾げた。

「だから、サプライズでやるの。そうでもしないと“そんなものは必要ない”ってはねつけられるって大和さんが言ってた」

「まぁ、そうなるよね。そこまでして企画する理由って一体何なんだろ」

樹と会話をしながらもきちんと動いている満の手は実に作業的だ。