打ち合わせが終わり、珠子が帰宅したあとの部屋で奏はひとり煙草をふかしている。
騒がしい担当編集者と返品願いを出した贈り物が跡形も無く姿を消して、いつも通りの殺風景な部屋がもどっていた。
誕生日か――…。
十月二十八日は奏の誕生日。
その日まであと一週間。誕生日だからと喜ぶ歳ではない。
『この愛はぜーんぶ私が貰いますもんね。後から欲しいって泣きついてもあげませんから』
珠子の言葉が蘇った。
愛など幻想だ。
手にしたと思えば消えてなくなるシャボン玉のようなもの。
その美しさに一度でも永遠を求めれば失った喪失感に苛(さいな)まれることになる。
煙草の灰が今にも落ちそうで、奏は灰皿の上でトントンと煙草を弾いた。



