恋は小説よりも奇なり


「……分かった。見るだけ見たら持って返ってくれ」

奏は開封したダンボールの中を覗き込む。

有名店のお菓子やら綺麗なレターセットでギッシリだ。

彼は本当にただ覗くだけで手に取ろうとはしない。

珠子はその光景を渋々見届ける。

立場や後処理がどうこうというのもあるが、この贈り物たちはみんな小説家の武長 奏に対する愛なのだ。

本当ならその愛の全てを彼に受け取ってもらいたい。

しかし、奏は他人からの愛情を受け取ろうとしなかった。



珠子が武長奏の担当になったのは三年前。

上司である大和から武長 奏という人物について話を聞いた。

武長 奏はラブストーリーを書かない。

彼の知る愛情の全てを十年前に失って以来、心の辞書に“愛”という言葉は存在していない。

しかし、誰よりも愛情に憧れを持っていたりする。