恋は小説よりも奇なり


“高津書房”と言えば出版業界きっての大手。

業界に詳しくない人間でも社名ぐらいは誰でも知っている有名企業だ。

「三十三歳独身。ただいま、絶賛花嫁募集中。ちなみに――…小説家 武長 奏は俺の幼馴染でまだまだ読者募集中。なっ、奏?」

大和は奏の肩に手を置いて子どものように無邪気に笑う。

「た、た、た……」

大和の付け足しは満の心に落雷にも似た大きな衝撃を与えた。

奏を指さす手がプルプルしていて、意識をしなければ呼吸さえ忘れてしまいそうだ。

満の異常なまでの反応に気付いた大和は「あれ……俺なんかマズイ事言った感じ?」と奏に確認する。

奏はやっちゃった感いっぱいの表情で自分の額を押さえるだけだった。

大和は、少し軽めだがとても友好的で話しやすい人物だ。

話し上手で聞き上手。

大和との会話は自然と弾み、憧れの武長 奏を目の前にガチガチだった満の緊張も徐々に解けていく。